昔からずっと気になっていたSF作品の「高い城の男」
この作品を先月読み終わって、読後の感想など・・・。
よく言われたことですが
「高い城の男」は作家自身(フィリップKディック自身と作中に出てくる「イナゴ身重く横たわる」の作者アベンゼン)を表している。
発禁になるような歴史改変小説を書いているので自らの身を守るために難攻不落の険しい山に高圧電流を張り巡らせた城に住んでいる、というわけですね。
しかしそれは本当に小説の所為なのか?
小説を読み終わって、気づいたのですが、主人公たちは、あちらとこちらの世界を行ったり来たりしているわけです。ヒロインが実際に作中に出てくる「イナゴ身重く横たわる(第二次世界大戦で連合国が勝利した現実の世界を描いている)」の作家のアベンゼンの家に行くと、いつの間にかそこはセキュリティバリバリの城砦ではなくて、平和で家庭的なこちら側の世界の家、に替わってしまっていて、ヒロインはアベンゼンと話して、その秘密を知るんです。
どうやってこちらの世界の来たのか、もう一つの世界を作り出し、異なった世界に来れる方法を・・・。
作中で語られていますが、筮竹でその選択肢ごとの結果を占い、小説の中でその経過と最良の結果を描く、と言う方法です。
※この筮竹の占いは絶対に外れません。
平行世界を作り出し、最も良い結果の世界を選んで移り住む、ということですね。
実際に作家アベンゼンは理想の世界に移行することに成功し、おそらくヒロインも別れた夫とともにこちらのより良い世界でやり直すことが暗示されています。
ただ枢軸側が勝った世界を描いたと言うだけでは発禁になんかならないでしょう。
フィリップ・K・ディックは、新しい物語を紡ぐ事によって、世界を変えてしまうと言う物語を書いたから、それが非常に危険視されたのだと思います。
時の政府にしてみたら、それが実行に移されたら平行世界が乱れて現実の世界が収拾が付かなくなるでしょう。
偽者と真実の歴史の見分けが付かなくなってある意味世界が崩壊します。
イラクに大量の破壊兵器があると言う空言を信じて爆撃してしまう米国ですから、ディックの書いた異世界を作り出してそちらを真実の世界にしてしまう、という小説の中で語られている虚構を真に受けてしまったのかもしれません。
原爆を作り出したユダヤ人が主人公になっている小説ですからね。
実際意識を異次元に飛ばして未来を垣間見る預言者を輩出している民族ですから。
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